生命保険会社の予定利率と逆ザヤの現状

逆ザヤ
 
生命保険各社は、バブルの頃に5.5%の予定利率(以下、保証利回り)で保険を売ったものの、バブル崩壊後の超低金利時代になると債券投資や株式投資などの運用収益が保証利回りを下回るようになりました。逆ザヤの発生です。
 大手生保七社の逆ザヤは一兆三千億円ちかくに達しており、各社の経営を圧迫しています。

 契約時に保証した利率は契約が消滅するまで継続されます。しかし、高い保証利回りを引き下げることは契約上できないのです。

その理由
 
本質的な要因は、生保のALM(資産負債管理)の甘さにあります。
 10年ものの契約には、それとキャッシュフローが等しい10年ものの資産(債券等)を対応させることにによって、金利リスク(予定利率)を軽減することです。

 もともと、日本には長期負債にマッチングできる長期資産が少なく、ALMは容易ではありません。であれば、金利低下が予想される場合にはその対応をするべきでした。ところが、現実は契約獲得競争の為に予定利率の引き下げを甘くして、株式の含み益に依存する体質から抜け出せませんでした。

 生命保険会社には以下の3つの収益源があります。
予定利率と運用利回りの差である
利差損益
実際の死亡率と予定死亡率の差である
死差益
実際の事業費と予定事業費の差である
費差益

 生保は予定死亡率や予定事業費率については、余裕をもって設定していますので、利差損益における逆ザヤが拡大しても、それをカバーして資産や内部留保を食いつぶさずに済みます
 しかし、状況が変化して来ました。

1、保有契約の減少 2、所得低迷による保険契約の見直し 3、生保不信 4、少子高齢社会などを背景に、(生保離れ)が進んでいます。

 価格競争の激化、96年4月の半世紀振りに保険業法改正により、生損保の相互参入が認められ、その後も外資系、カタカナ系・ひらがな系などと競争は激化する一方です。

 97年4月の日産生命以来、生命保険の破綻は7社を数えていますが、このままの状況が続けば、破綻に至る生保がほかにも出てくる可能性があります。

 96年4月の業法改正に伴い生保の健全性判定基準として導入されたものです、通常の予想を上回るリスク相当額を、自己資本等でどの程度カバーしているかを見る指標です。 (リスクに対応できる支払余力がどのくらいあるかを判断するための指標のことをいいます。)

 保険リスク・予定利率リスク・資産運用リスク・経営管理リスク等、生保が抱える様々なリスクの合計額の二分の一を分母とし、資本・価格変動準備金・危険準備金・株式含み益・劣後ローン等の合計(リスクが発生した場合の支払い原資の総計、ソルベンシー・マージン)を分子として、その比率を計算したものです。

 この、比率が200%を下回った場合には、金融庁長官によって早期に経営の健全性を回復するための措置(早期是正措置)がとられます。しかし、同指標の算出基準には、いくつかの問題点が指摘されています。

 2000年3月大正生命に早期是正措置が導入された直後、政府は保険業法の再度の改正案を閣議決定しました。これを受けて、5月には、再建型の会社更生法を相互会社である生保に対しても適用出来るようにした「更生特例法」が国会で成立しました。これまでは破綻状態にある事を認定し受皿会社に包括的に移転する場合にしか、契約内容の変更はできませんでした。

 更生特例法の成立により、債務超過に至る前であっても、金融庁に申し出ることによって、予定利率の引き下げが可能となりました。それ以降、千代田・協栄・東京生命が更生特例法を申請して破綻しています。

 保険契約を結ぶにあたっては、銀行預金と異なる大きなリスクが伴っています、預金であれば、ペイオフが解禁されても1000万円までは保護されます、また預金者の意思で経営不振に陥った銀行から他の銀行に口座を移すことが出来ます。
 保険の場合には、他社への乗り換えは解約となります、だからと言って生命保険会社について何もしらないままでいると、破綻により、予定利率が大幅に引き下げられる可能性もあります。

 生保の信用状況を判断することは、きわめて困難です、相互会社形態の生保が多く、業界自身もディスクロージャー(情報公開)に前向きでなく(金融庁もそれを容認してきました)。これまでの破綻ケースにおいても、直前の決算書のみからは読み取ることはできませんでした。
 早期是正措置も導入されましたが、その基準となるソルベンシー・マージンは、現実には100%程度「操作」する事は容易とおもわれます、こうした現状では重要な手がかりとなるのは格付機関による格付であるといえます。


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