勝ち組みのプロ代理店になる -4-

相続対策に不動産がらみ基礎知識を学ぼう
保険商品のアプローチだけでは成約できない

【まずは自分で情報収集を】
 相続対策というと、普通は、いかに資産評価額を下げるか、ということに目がいってしまう。借金などをして、単純に相続税の評価額を引き下げればいいのか。その後、遺族がどのように生活をしていくのか、といったことまで考えてあげなけ ればならない。
 今後はともかく、いま、相続対策で悩んでいる うちの7 〜8 割は不動産がらみである。つまり、 相続を絡めて保険を勧めるのであれば、最低限の不動産取り引きに関する知識があったほうがいいのではないか。

 代理店の研修会などに行っても、不動産絡みの事例が出てくると、どう取り扱えばいいのか、担当者は門外漢だからと即答を避けるし、だからといってどこに相談をすればいいのかもわからない。直接専門家に相談するのもいいが、海のものとも山のものとも分からない話をどう聞けというのか。

 唯一の解決策は、自分で情報収集や勉強することだ。お客さまのところで何か相続がらみで問題をぶつけられた場合、誰かに相談するまえに、自分で調べる。
 まずは大型書店に足を運び、それらしい本がないか隈無く調べる。場合によっては、問題と本のタイトルが結びつかないことだってある。絞り込んで購入するまでに4 〜5 時間かかることもざらだ。それから勉強をはじめ、知識を整理していく。
 全てを理解できるわけではないが、お客さまと対等に話せ、問題点の所在がはっきりすれば、後は専門家につないでもいいわけだ。


【遊休地事業化で保険料捻出】
 単純に、「保険に入っていれば財産が防衛できますよ」的な話法展開では自ずと限界がある。もちろん、資産にもよるが、完全防衛となれば、相応の保険に入らなければならず、特に、相続人がサラリーマンの場合、保険料の負担に耐えられないケースがほとんどだ。私のクライアントにも、現時点での相続評価額が10 億円以上あるのに、キャッシュは数千万円しか持ち合わせていない方が何軒かある。資産のほとんどが不動産なのだ。

 相続税の納税は金銭が原則なので、手持ちのキャッシュではとても賄いきれない。延納か物納しかないのだが、納税者有利な納税方法が認められているわけではない。延納によっても金銭での納付が困難な場合に物納が認められるが、それには複数の要件を満たす必要があり、その1つに「物納財産が管理または処分に適するものであること」といった項目があり、基本的には流通性のないものは物納の対象にならない。常識的に分かりそうなものだが、なぜか判断が甘くなってしまう。

 つまり、消去法で自分の住まいや事業用地などを残し、最後に残ったモノで物納をしょうとする。しかしそれは多くの場合、問題含みなのだ。
 例えば、駅から近いなど立地条件が良くても、底地、つまり貸してあるような物件は、物納として取りたがらないだろう。にもかかわらず「物納がある」と思って、対策を怠っているケースが散見される。

【ロードサイド店に貸す】
 さて、その遊休地だが、2,500 坪弱で当時は竹やぶだった。これを更地にして建物を建てることになったが、その費用をどこから捻出するか。
 相続税を即納でなきなかったことを持ち出すまでもなく、現金がない。つまり基本的には銀行から借りなければならないのだが、果たしてテナントが付くのか……。

 都内の農地ならマンションでも、と提案したいところだが、場所的には使途が限定されてしまう。最終的には、リスクを最小限に抑えたいとの意向を反映し、ロードサイド店に土地を貸すことになった。

 さらに土地を一般的な方法で貸すだけでなく、事業用の定期借地権方式にしたい、ということになった。当事者との関係をドライに、契約期間も20 年とし、自分たちが生きている(だろう)うちに、満期を迎えることで契約がまとまった。
  ここまで文章に書くとスムーズにことが流れていったような印象を持つかも知れないが、最終的には2 年の歳月を要している。借地契約書の作成、対象地積の確定、関係官庁への手続き(農地転用、開発届けなど)、土地賃借人の選定、借地契約締結、というステップを踏んでいった。

 借りる店も決まり、月々200 万円弱の賃貸料と保証金が入ってくるようになった。その資金で、延滞している1 次相続の税金を全て納めれば、次の問題は2 次相続にどう対応するか、といったことになる。もちろんフローの資金が相当入ってくるようになったので、これで賄えるが母親に生命保険の手当てをすることを提案した。

 基本的にはいつ相続が発生するのはわからないので終身保険で、ということに話がまとまったが、年払いにするか、一時払いにするかで悩んだ。
 必要保障額は3,800 万円だったが、これを年払いで払うと、80 歳前半で一時払い保険料を超えてしまうことが判明。結局、一時払いで払うことになった。保険料は2,500 万円だった。

 10 年後に相続が発生したと仮定すると、保険に加入することで1,800 万円ぐらい相続評価額が増える計算だったが、間違いなく現金が入ってくることで納得した。
 保険の部分で言えば、最後の最後に登場して、2次相続のアプローチをしてもよかったのかもしれない。しかし、それで保険が契約になったかどうか。テナントを一緒に探すなど、2 年間の時間は無駄に過ごしてきたわけではないのだ。

 竹やぶを更地にしたあたりから、「動きがあるのかな」という感じで保険会社の営業職員や代理店も来ていたようだが、アプローチも通り一遍の2次相続対策や長男の死亡・医療保障といった一般論に終始してしまったようだ。月々のフローが分かっている部外者は、顧問税理士ぐらいのもので、それを保険のプランニングと摺り合わせていくのだからアプローチの精度が違う。

【新契約には結びつかなくとも】
 不動産と相続がらみの事例をもう一つ挙げたい。これは、保険契約に結びついたわけではないが、生命保険、貯蓄性の損害保険に加入していたため最低限の生活を守ることができた、という話だ。テナントビルを経営していた先代のB 氏が死亡し、長男が後をついだが、1 年も経たぬうちに急逝した。

 同社は、相続の評価を土地保有特定会社としてやらなければならず、2 度続けての相続発生に多少の優遇措置があったとしても、一家は追い詰められていった。つまり土地の評価そのものが自社株の評価になってしまうため、何のために法人化しているのか、今となってはメリットが見いだせないような状況だった。

 恐らく先代が法人化したのも、相続税の負担軽減を狙ったものだったのだろうが、バブルの崩壊・景気低迷でテナント契約が次々と解約、収入が落ち込んだり、子供が自分の後を追うように他界するとは想像していなかったに違いない。
 結局、残されたのは妻と娘さんの2 人だったが、当然、というべきか相続税を払えず、延納の手続きをとった。下の娘さんは、当時、高校生だったが、5,000 万円もの借金を抱え込んだようなものだった。

 ある人の紹介で初めて訪問したときは、ビルを維持していくための運転資金も底をつきどうしようか、と失意のどん底にいた。とりあえず、預貯金以外に現金化できるものがないか、有価証券、ゴルフ会員権、保険契約書を出してもらった。
 「平常時」なら、当方でアドバイスをするまでもなく、整理し当面の運転資金・生活費を捻出したに違いない。しかしそんな悠長な状態ではなかった。おおよそ4,000 万円、向こう6 ヵ月ぐらい回していける資金を確保したが、それは破綻までのカウントダウンが始まったに過ぎなかっただ、事業の継続は望んでいなかったので、6 ヵ月以内に売却し、相続税と借金を完済できればよかった。
  まず、空室を埋めることから始めた。テナントはそう簡単には見つからなかったが、消費者金融なら埋まるということで、決断をしてもらった。

 一般的には忌避されがちだが、大手業者は潤沢に資金を持っているところも多く、好条件で入居してもらえた。空室はほとんど同業者で埋まってしまった。町中でも、一つのビルに消費者金融がかたまって入っているビルを見かけるが、入居可能なビルにどうしても集中してしまうのだろう。

 いずれにしても、思った以上にテナントを埋めることができ、事業の継続も可能な状態に戻ったのだが、売却の意向は変わらず、不動産M &A (企業の買収・合併)で売ることになった。
 なぜM &A にしたか。単純に言えば、有価証券として売却した方が、不動産として売却するより税金の負担が軽かったからだ。最終的には自宅さえ残ればいい、ということだったので、極端に言えばビルがいくらで売れても、構わなかった。

 そのため売却価格を安くすることで、買い手を早く見つけることができた。
テナントも埋まっている状態なので利回りも決して悪い物件でなかったことや従業員がいなかったことも問題解決のテンポを速めた。
 廃業してしまったので、新契約にならなかったが、このまま継続していれば、当然、3 次相続の対策を考えるということになったはずだ。

農地法
●目的
農地は、耕作者みずからが所有することが最も適当であると認め、1 )耕作者の農地の取得を促進し、2 )その権利を保護し、3 )土地の農業上の効率的な利用を図るため、その利用関係を調整し、耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図る。

●ポイント

  • 転用(権利の移動を伴わないもの)の許可〈第4 条〉
    同 一事業で4ha を超えるもの→農林水産大臣/同一事業で4ha 以下のもの→知事
  • 転用を目的とする権利移動の権利〈第5 条〉
    同 一事業で4ha を超えるもの→農林水産大臣/同一事業で4ha 以下のもの→知事
  • 農地のままでの権利移動の許可〈第3 条〉
    通 常→市町村農業委員会
    農 地取得者が法人、土地が所在する市町村外の農地取得→知事

生産緑地法
●目的
 生産緑地地区に関する都市計画に関し、必要な事項を定めることで、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境を形成していく。

●ポイント

  • 生産緑地地区に指定されるには、現に農林漁業用地であって、1 )生産環境機能・多目的な公共施設等の敷地として適していること、2 )面積が一団で500 平方m 以上の農地等であること、3 )農林漁業の継続が可能であることが要件になる。
  • 生産緑地地区内では、住宅、事務所など建築物等の新築、改築・増築や、そのための宅地造成などはできないが、ビニールハウスや選果場などの施設は、市町村長許可を受け建築等を行える。
  • 生産緑地に指定されてから30 年を経過した場合や、農林漁業の主たる従事者が死亡などに至ったときは、市町村長に対して、時価で生産緑地を買取る旨の申し出ができる。

農地等の相続税納税猶予制度
●目的
 農業は、農地の所有と経営が不可分であることから、農業後継者が農地等を生前一括贈与により取得した場合については「贈与税納税猶予」の特例制度が、また、農業相続人が農地等を相続または遺贈により取得した場合については「相続税納税猶予」の特例制度が設けられている。

●ポイント

  • 相続人が、農業を営んでいた被相続人から農地等を相続し、農業を継続する場合に、次の相続か、農業後継者に対する生前一括贈与があるまでの間、相続税の納税が猶予される。また、相続税の申告期限から原則として20 年を経過するまで、農業用地として使用した場合は、猶予された税額を免除。
  • 被相続人の要件 /死亡の日まで農業を営んでいた人 、贈与税納税猶予の適用を受けた農地等を生前一括贈与した人
  • 相続人の要件 /相続税の申告期限までに、相続か遺贈により取得した農地等で農業経営を開始し、その後も農業を継続すると認められる人、贈与税納税猶予の適用を受けた人で、農業者年金の経営移譲年金を受けるために、その推定相続人の一人に農地等を使用貸借による権利設定をして農業経営を移譲した人
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